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平面図形の世界を体験する、分かる、広げる(前段) [研究会で]

今年の研究会での論文です。これまでの記事と多少重複しますが3回に分けて掲載します。

【1】高校生に平面図形を教える問題点を整理する
 これまでの経験から、高校生に平面図形を教えるにあたっての問題点を次の4つと考えている。
(1)図形の概念へのリアルなイメージがない
 例えば、△ABCにおいて、角Aの二等分線、点Aと辺BC中点を結ぶ線分(中線)、辺BCの垂直二等分線、どれも三角形を2つに分ける線と言える。しかし、この3本の区別があやふやな生徒が多い。このように図形的な思考のイメージが不足しているのは、子供時代からの図形体験が乏しいのではないからだろうか。

(2)図形の定理の証明に苦手意識をもっている  平面図形の理解の浅い生徒が定理の証明の繰り返しで平面図形を理解するのは適無理があると思われる。証明に苦手意識をもつ生徒は、自分がうまく証明が理解できないことと平面図形の性質が分からないことを混同してしまうようだ。

(3)問題を解くのに直感が必要となる。
 生徒は決まった方法(パターン)で解答できる問題を好む。教員もそうした方向に授業展開を考えがちだ。逆に、直感がないと答えが見つからない問題は、さけられることが多い。平面図形領域ではそうした直感の壁を超えねばならない場面が多い。

(4)中学での学習が定着していない生徒が多い
 基本事項も理解できていない生徒は多い。平面図形領域の学習では、論理的に理解することが繰り返されるので、分からないこと1つがその後の学習の流れを止め、意欲を削ぐことになりがちである。

【2】問題点を解決するには
  【1】で述べた問題点に配慮した具体的な授業方法について提案する。

[A]コンパスと定規を使う前に折り紙で導入 
 コンパスも定規も苦手な生徒がいるので、まず折り紙で図形的なイメージを手を使って活動させる。

(1)三角形の色紙を用意する。その三角形の一辺の垂直二等分線を折らせる。折り方を確認したら残りの辺でも折らせる。時間の余裕があれば中線や角の二等分線でも試させるのもよい*
図1
    ※外心は中学で未習
(2)折り紙を用意する。それを使って45°を折らせる。次に60°を折らせる。
(1:2になる直角三角形を作れば良いとヒントを出す) 参照:オリガミクス 芳賀和夫著 日本評論社刊
*図2

[B]中学の平面図形領域を復習する。 
 平面図形領域に関しては、苦手意識を持ち未習得な生徒が多い。また、作図体験も少ないようだ。そこで3時間で作図を中心に中学の範囲を復習する。

(1)作図の基礎
線分を1辺とする正三角形
1点から線分への垂線
線分の垂直二等分線
角の二等分線
線分を1辺とする正方形
線分を1辺とする正六角形
(2)合同な図形/平行四辺形
三角形の合同条件
合同な三角形の作図
平行四辺形の成立条件
平行四辺形の作図
同位角・錯角の性質(問題演習)
(3)相似な図形/円周角の定理
三角形の相似条件
相似比の性質(問題演習)
円周角と中心角の性質
円に内接する四角形の角度(問題演習)

[C]作業と思考が両立した授業展開をする 
 平面図形領域では、図形作業で性質を発見する活動(体感的理解)と論理的な思考で性質を証明する活動(思考的理解)の両方が満たされて初めて本当の理解(心理的理解)が達成されるように思う。

 今の生徒たちは、図形体験が乏しくリアルなイメージが湧かないので、かつての初等幾何の授業ではうまくいかない。そこで、論理的証明に加えて、作図などの作業も積極的に行わせたい。また、作業がうまくできたという成功体験が、図形への苦手意識を克服させるように思う。

 作図をした後に長さや角度の計測もすることで一段と図形の性質を実感できるように思う。さらに、計測した数値から規則性を発見できるようにすれば、図形の性質への気づき(ひらめき)が面白いと感じられるきっかけになるだろう。
 例えば、難しいチェバの定理もプリント(図3)で作図をさせた後で計らせて、数人の生徒の結果を板書しそれの平均値をとったところ0.98〜1.02の範囲になり定理の正確さを証明する前に「本当らしい」と納得することができた。そのあと少々難しい証明を示しても前向きに学習できたように思う。

 作業と思考を次のような流れで組み合わせる授業が理想的だろう。
❶作図作業(まずやってみよう)
  ⇩
❷図形の共通性質の探究(どうなってるの?)
  ⇩
❸性質の発見(こうなっているらしい)
  ⇩
❹証明への渇望(ほんとうかな?)
  ⇩
❺証明の達成(なっとく!)

全ての教材でこの流れにするのは難しいが、方べきの定理、メネラウスの定理、外心作図法の探求などではかなり効果的だ。


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降龍十八章

メネラウスをいつもメラネウスといってします私です。一度問題を解くと意外と覚えやすいですね。チェバ、メネラウス、方べき、など
昔のチャートでは発展的内容で隅にチョコっとのっているだけでしたが、最近のカリキュラムだと必修のようですね。
by 降龍十八章 (2005-12-13 00:23) 

hideo

こんちには〜降龍十八掌さん、コメントありがとうございます(^^)

お返事遅れて申し訳ありませんでした。どうしたことか昨日は、Webへのアクセス不能でした。メールは大丈夫なのに不思議です。

メラネウス、ありそう〜シミュレーションかシュミレーションかみたいな話多いですよね。この年になるとますます怪しさが増します。^^;

チェバと方べきは教科書に載っています。メネラウスの方は、発展に紹介されています。その他、内心・外心・重心と円周角の定理・円に内接する四角形も取れ上げられています。

推測ですが、チェバ、方べきは長さや面積を求める問題として出し易い、つまり証明問題以外に問題を作り易いというところが評価されているように思いますがどうでしょうか?

研究発表の後半に書きますが、僕は、トレミーの定理を是非高校生に教えたいと思います。問題作成のためではなく数学理解のために重要だと考えるからです。
by hideo (2005-12-14 22:09) 

理科大好き人間

しばらく書き込みできずにすみませんでした。
折り紙で図形になじむとか、実際に測ってなっとくするとか、模型を作って実感するということは大切だと思います。
自分の時代には、チェバもメネラウスも正式には出ていなかったように思います。
図形の証明に限らず式の変形にしろ、この状況の中では、こんなことができればよさそうだ。とか、このことを言うためには、こういう攻め方をすればよいはず。だったら、この攻め方か、あの攻め方しかない。1つ目ダメ。2つ目成功。となったら、きれいに書けるために、整えて書く。生徒には、そうした、頭の中を解説
していないことが、あるいは説明させていないことがなじみのないものにさせているのかもしれないなあと思います。以前紹介した、因数分解のクロス計算はその点を考慮してあると思います。
by 理科大好き人間 (2005-12-18 00:08) 

hideo

>理科大好き人間さん

まったく同感です。教科書って最後のきれいにまとめたことしか書いていないのであれだけを読んでも勉強になりませんね。

>頭の中を解説していないことが、あるいは説明させていないことがなじみのないものにさせている

いつも同じようなことを感じていました。たとえば、ユークリッドの原論は論理の結晶みたいなもので美しいまとめですが教育的ではないと思います。おっしゃるように、実体験や試行錯誤など繰り返しながら、結論に到達できることこそ学ばせてあげたいですね。(^^)
by hideo (2005-12-18 20:57) 

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